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ホン門の拳 外伝-幼き日に拳に誓った復讐- 後編

無我夢中だった
ただひたすら拳を振り上げた
鋭い爪で体を傷つけられても、ただひたすらに
どうにか倒すことはできたが体は既にボロボロだった

その時修練場のほうから師匠の叫び声と大きな音が聞こえた


あれは・・・し、師匠!?
自分は脇目も振らず修練場へと駆けた





師匠・・・!しっかりして下さい!!師匠!!
倒れている師匠へと駆け寄る
息も絶え絶えに、傷ついた師匠がそこにいた

きっと師匠なら何とかしてくれる
そんな考えが心のどこかにあったのかもしれない

それが、過ちだとも気づかずに




ふと、前から足音と耳に馴染む声が聞こえた
慌てて前を見ると

・・・そんな

自分は言葉を失った
目の前にいたのは、兄弟子達を死に追いやった人物と・・・



先輩と慕っていた、ムソンだった
なんで先輩がそいつらと一緒に・・・

そんな疑問は、ムソンの放った一言で跡形も無くなった
ホン門神功の秘伝を手に入れるためだけに・・・
師匠の薬に細工を施し弱らせ、裏切り・・・
他の兄弟子達を死に追いやったのだ



師匠の咆哮とともに凄まじい衝撃が周囲を吹き飛ばした
吹き飛ばされまいと地面にしがみ付き、恐る恐る前を見る

し・・・師匠・・・?

目の前には師匠の姿とはかけ離れた姿の巨人が、凄まじい気を放ち立っていた









師匠は圧倒的だった
やつらの攻撃を跳ね除けながら、猛攻にでたのだ

ただ・・・
自分は師匠が放った攻撃の衝撃で吹き飛んだ

・・・これが自分が犯した大きな過ち









自分が吹き飛んだ先が、奴らのど真ん中だった
自分は人質となり、師匠に大きな隙を作ってしまったのだ

師匠は自分を助けるために、帰天剣という不思議な剣をこの女に差し出した






行け、と隣にいた女に言われ
師匠の下へと走る






師匠!し・・・



師匠の下へ駆け出したその瞬間
自分は再び言葉を失った



自分がたどり着くよりも先に、ジン・ヴァレルの放った攻撃が師匠を禍々しい気で包んでいた

し・・・師匠・・・!!





生きろ 必ず
師匠は自分をまっすぐ見て
最後にそう呟いた

師匠と泣き叫ぶことしかできない自分の目の前で
師匠を包むどす黒い気が暴れる

そして・・・







師匠の着ていた胴着だけが、地面へと落ちた

師匠・・・?師匠・・!師匠!!



ししょぉぉおおおおおおおおっ!!うゎぁあああああああああっ!!

師匠の胴着を握り締め、泣き叫んだ
自分のせいで、師匠は死んでしまった
幼い自分にもそれだけは理解できた

あの時そこにいなければ、師匠は・・・




後ろから女の・・・ジン・ヴァレルという名の女の笑い声とともに
ホンドウゲン、約束は守ったぞ という声が聞こえた




約束を守った?違う・・・!
お前は皆を・・・師匠を殺した!!
お前だけは・・・お前だけはッ!!





うわぁああああああああああッ!!








ジン・ヴァレルゥゥゥゥゥァアアアッ!!





ジン・ヴァレルへと飛び掛った自分は一撃で切り裂かれた

無力だ

今の自分には、抗う術も先輩や師匠の仇を討つこともできない

力が欲しい
力が・・・・






薄れていく意識の中で
先輩達と過ごした日々と師匠の優しい微笑みが浮かぶ




冷たい・・・
息ができない

そうか、海へ落ちたんだ
このまま死ぬんだろうか

いや、死ねない・・・まだ死ねない
どうにか体を動かそうとしたが、動かせなかった


その時、声が聞こえた





誰・・・?
誰かが何かを言っている
そこで、自分の意識は完全に途絶えた

この日自分は全てを失い
そして、先輩と師匠の仇であるジン・ヴァレルへ復讐することを・・・
この小さな拳に誓った

・・・どうやら、まだ目が覚めないらしい
この幼き日の記憶は、今の自分に何を伝えたいのか・・・

後編 終
続く




  • 紫昏00 2016.3.14. 23:50
    力がほしいの場面で、『力が欲しいか!?ならば、くれてやる!!』

    と某漫画のジャ○ウォックを何故か思い出しました( • ̀ω•́ )✧
  • タータミッツ 2016.3.15. 10:55
    そういやギファンの場合は遺体が残ったのに、ホン師匠の場合は残ってないから察するに、もともと師匠は概念体のような存在やった・・・とか?(^^;)