ホン門の拳 外伝-幼き日に拳に誓った復讐- 前編
2016.3.13. 16:19 | 閲覧数 4345 | いいね 18
修行を終えてムイル峰へと戻ったレンシロウ
修行の間も手がかりを探していたが、未だにヴァレルとカオルの行方は掴めてはいない
弟子達も二人の安否を気にしている
修練にも余り身が入っていない
ふと、師匠は小さい頃はどんな感じだったの?とボーナに尋ねられた
シンシンも同じ拳闘士として、教えてください師匠!と詰め寄って来た
ボニートは、小さい頃からそんなに凄かったの?有り得ないでしょ!と相変わらず生意気だが、根はとても優しい性格だ
そうだなぁ・・・
無力だったよ、あの頃は
基本的な武功も学び始めた頃で軽功もろくに使えなかったんだ
お前たちのほうがよっぽど優秀さ
とりあえず、今は基礎修練を確り積んでおけ
いつまた戦闘になるか分からない
それに・・・
この子達には復讐の道を歩んで欲しくはないのだ
かつての自分のように・・・
今はヴァレルの部屋だが、あの頃はここが自分の部屋だったな・・・
・・・・
・・・・・・・
懐かしい声がする・・・
いや・・・
あれ・・・ジニー先輩?
「ジニー先輩?じゃないわよ、まったく起こさなかったらいつまでも寝てるんだから」
怒っているが、どこか優しい声色がとても懐かしい
ああ、間違いない ジニー先輩だ
なんだ、ジニー先輩こんなに大きかったっけ・・・?
いや・・・これは・・・
体が・・・子供に?
これは夢か・・・?
先程までヴァレルの部屋にいたはず・・・
「ほら、いつまでも寝ぼけてないで他の先輩を起こしに行くわよ!」
ああ、そうか・・・
これはあの時の記憶だ
全てを奪われ、絶望し、復讐を誓ったあの日の記憶
大先輩はとても大きくて、師匠に拾われてムイル峰へと来たときには驚いたな・・・
見たくないツラだ
ムソン・・・この時の自分には
頼りがいのある強い先輩だ、という認識だった
このあと起きる惨劇を知っているから、余計に許せなくなるのだ
しかし、自分もかつてホン門の教えに背き魔道へと落ちた
力が欲しかったんだ
ジン・ヴァレルを倒せる力を
復讐を果たすための力が
形こそ違えどムソンも同じだった
でも・・・やはりアイツだけは今でも許せない
朝礼が始まる
一番下の自分はユウ先輩の隣だ
まだ基礎修練もできず、もっぱら雑用ばかりだけど
とても楽しい日々だった
家族がいない孤児の自分には、ムイル峰の皆が家族だったんだ
その時師匠に呼ばれて、ホン門武功秘本を与えられた。
今日からやっとホン門派の弟子として、修練を始めることを許されたのだ
やっと武功を学べる
兄弟子たちの祝福をうけて、大先輩の後についていく
やっと先輩達と一緒に同じ修練ができるんだと喜び
本格的な武功修練についていけるだろうかと幼い自分は緊張で一杯だった
思い出の木人形・・・
ほら打って来い!と言われて、この人形喋るの・・・!?と驚いたっけな・・・
ここで拳闘士としての基礎を教わったんだ
程なくして書信が届く
修練洞窟へ来い、という内容だ
大先輩に連れられ修練洞窟へいくと、そこには覆面鬼がいた
これはムソンだったが
やはり先輩だ・・・
あっという間にねじ伏せられた
運気調息の仕方をここで教わったな・・・
その時、外から何かが壊れるような音が聞こえた
そうだ、この後起きるのは・・・
忌まわしい惨劇の記憶だ
修練洞窟を飛び出すと、外ではユウ先輩とムソンが見たこともない異形の化け物と戦っていた
ここは任せて早く行け!と言われて広場へと続く階段を駆け上がる
普段とは違う嫌な空気に包まれたムイル峰
階段を駆け上がると、目の前にキルホ先輩が現れた
ジン・・・ヴァレル・・・
そういい残して、崩れるように倒れる
キルホ先輩・・・?キルホ先輩・・・!!
呼びかけても、体を揺さぶっても返事はない
既に冷たくなった体が、キルホ先輩が息絶えていることを証明していた
ジニー先輩!?ヨラク先輩!!
震える足に力を込めて駆け出す幼き自分
駆け出した瞬間、母屋の上で師匠が誰かと戦っている姿が目にはいる
どうにかして師匠の所まで・・・
修練上近くまでたどり着くあたりで、目の前に異形の化け物が現れた
正直、この時の自分は何を思っていたのか混乱していてよく覚えてはいない
ただ耐え難い恐怖と、こいつらが先輩達を・・・と激しい怒りが入れ混じった状態に支配されていたのは分かる
拳を握り締め、木人形に打ち込み続けた裏拳を思い出し
目の前に現れた化け物と対峙する幼き自分
もしかしたら死ぬかもしれない
でも何もせずに死ぬなんて出来ない
絶対に許さない!
幼き自分は、化け物に飛びかかった―――
前編 終
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続きがすごく気になる展開ですね。
記憶のレールをたどるだけなのか、どこかで変わるのか・・・物語の編み方がさすがです。 -
>>ロンディワルさん
本当は最後までやる予定だったんですがちょっと用事で前編後編と分けました
流れとしては辿りながら色々と盛り込んでいく感じにしようかと思っていますー