前回の続き【閲覧注意】…姉弟愛、その深さ故に。
2016.1.22. 23:42 | 閲覧数 3282 | いいね 13
【閲覧注意】
※ 本編では、一部残酷なシーンが含まれております。ご注意下さい。
前回の続き~
緑明村にて、巴が見たもの。
それは「鬼」となってしまった弟 朱仁 の姿でした。
その姿は禍々しく、いつもの朱仁の気配は全く感じられません。
でも、紛れも無くそこにいるのは最愛の弟の姿です。
そして、巴は気付きます。
そう、紫電がないことに。
手紙で知っていますが、紫電がかなり破損の状態になっており、また、弟子たちのことで心が弱っていたことも・・・。
そして、その背中にあるのは・・・
黒く異様な気配を持つ刀・・・。
巴は知っています。かつて、妖刀と呼ばれる物を見た事があり、そこにあるのは正に妖刀其のものの気配・・・。
「あっくん、何してるの!
妖刀でしょ!それ・・・。
かつてお父上様が言ってた事、忘れたわけじゃないでしょうね!!」
「・・・・・・・・」
「お姉ちゃんの言う事、聞いてるのっ!!」
「・・・・・・」
(やっぱり、心を支配されちゃってるわね・・・?!)
突然動き出す朱仁。
迷い無く踏み込んで来るその速さは、巴の知る朱仁の動きではなかった。
しかし、巴の回避能力はそれを上回っており、間合いを取って離れる。
「・・・問答無用というわけね!
それにしてもこの妖刀!私の大事なあっくんに何て酷い事させるのよ!!
許さないわよ!!!」
こうして、巴は朱仁の身体を乗っ取った妖刀と戦うことになったのでした。
物凄い速さで攻撃を繰り出す巴。
しかし、鬼はそれを簡単にかわし、または防ぐ。
更には、隙あらば攻撃を仕掛けてくるが、巴もまた身につけた無手格闘術によって攻撃を避け、または弾く。
一進一退の攻防が続く。
互いに様々な技を繰り出す中、次第に巴は鬼の動きを見切り始める。
そもそも巴は目が良く、運動神経も良い娘であった。
故に幼くして池内流無手術の免許皆伝となり、朱仁相手に遅れをとったことは一度も無かった。
それが判ったのか、鬼は次第に大きな技を仕掛けてくる。
それをもかわす巴。
しかし、その中で鬼の動きが変わっていることに気付いた。
そう、まるで朱仁の意識があるようであった。
「あっくん?」
何気なく呼びかける。すると
「・・・姉上・・・」
「気がついたのね!しっかりしなさい。鬼に打ち勝つのよ!!」
「・・・姉上、拙者を殺してくだされ・・・」
「な、何を言ってるの?そんなこと出来るわけ無いでしょ!」
互いに動きが止まる。
鬼はぶるぶると震え、何とか攻撃しようとするが、朱仁のせいで出来ないようであった。
「…拙者は力が欲しかった。あの時、弟子たちを救うことも出来ず、拙者はムイル峰での苦い思い出を思い知らされたでござる。
故に強さを求め、壊れた紫電を納め、新たなる力を求めるたびをしてござった・・・。
そして見つけたこの刀。
銘は無いが、その気配に拙者は頼ったでござる。」
「なんて馬鹿な事を・・・。お父上様にあれほど言われていたでしょ!」
「覚えてござるっ!
覚えていたでござるよ・・・。されど、拙者の力であれば、この刀を抑えられると慢心してござった。その結果がこれでござる・・・。
…姉上、申し訳ござらぬ。
もう、このまま拙者は消えてしまいそうなのでござる・・・。
それほどに此の刀の主は強力なのでござる。
然らば、どうか姉上・・・、愚かな弟の最後の頼みで、姉上の手で拙者を殺してくだされ!」
「できるわけ無いでしょ!!」
「ならぬでござる!!もう、一刻の猶予もござらぬ!!
拙者の意識があるうちに、どうか、拙者が押さえている間に此の身体を、此の命を止めてくだされっ!」
「~~~っ!!」
巴は涙を浮かべ、項垂れてしまう・・・。
幼きより共に過ごし、共に笑い、悲しみも共に背負い、二人で懸命に過ごしてきた最愛の弟である。
何故、愛する弟の命を奪うことが出来ようか!
「お願いでござる姉上。父上や母上の教えをわかっておらなんだ拙者の過ちにござる。
頼れるのは姉上しかおらぬでござるよ。
拙者としては、此の身体を鬼となって好きにされとう無いでござる。
どうか、お願いでござるよ・・・。おねいちゃん。」
『おねいちゃん』…朱仁がよく呼んでくれた愛称。
そう呼ぶ幼き朱仁との思い出が次々と溢れ出てくる。
「もう、限界でござる・・・。」
その声に鬼は一段と大きな気を纏った。
それに応じて、巴も心を決め、
「判ったわ・・・。」
右手に力を貯めていく・・・。
正に、この一撃で終わるようであった・・・。
膨れ上がる大きな力。
ゆっくりと気を練り、力を拳にためる巴。
そして、鬼が動いた。
それは、朱人の最も得意とする居合いからの突き。
最速の必殺技であった。
もちろん、巴は知っている。
朱仁の事ならば全て知っているといって過言ではない。
それほどまでに愛した、今では唯一人の肉親だ。
そして、その刀の軌道を見切り、覚悟を決めた。
技を解き、両手を広げて、愛する弟の身体を受け入れたのだった・・・。
「・・・、終わったでござるか?」
ふと顔に柔らかな感触を覚え、目を開ける。
「うおっ!!」
「…気がついた?」
声がして、視線を上げる。
「あ、姉上・・・。」
微笑む巴。その顔はいつに無く美しく見えた。
「元に戻ったのね・・・。良かった・・・。」
「あ、姉上・・・、申し訳ござらぬ・・・。
されど、これは一体?」
聞こうとするが、巴の言葉はそれを遮った。
「あっくん、これからも大変だろうけど、絶対に負けないで。
諦めなければ、きっとやり遂げられるから・・・、努力は・・・、必・・ぅ・・・み・の・・・・・」
「姉上?」
そして、気付いた・・・。
姉の腹に深い刺し傷があったことを。
「あ、あねうえぇー!!」
巴は最高の笑顔を見せる。
「がんばれ、あっく・・・。」
その言葉は終わりを告げず、巴の瞳が閉じた。
そして、口から滲み出る紅・・・。
そしてそのまま、崩れる様に倒れた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・?!
「うわぁあああああああああああああああああ!!」
>続く
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愛ですな( ノД`)シクシク…
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最初から最後まで目の離せない作品ですね。すごいの一言です。
あえて禍々しいオーラがまとうかのように手間をかけている点もすごいのですが、
技術のための技術ではなく、物語のために技術があるというところに、
表現をたしなむ端くれとして、敬服します。
続きを期待申し上げます。
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前回からシリアスな展開に⌒゚(σσ;)゚⌒
ドーンなアップで正気に戻ってホワァって終わると思ったら(ノ◇≦。)゚⌒こ、コワイ -
おねいさああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!
ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!! -
むむ~、助けなきゃ!!
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閲覧下さり、誠に感謝でござる。
また、いいねやこめんと、かたじけのうござる。
紫昏00殿
誠、姉上は優しく、愛に溢れた方でござる・・・。
ロンディワル殿
今回の話、拙者の未熟が引き起こした大事でござる・・・。
( わ:お褒めの言葉、心より感謝申し上げます。
こちらの掲示板で皆様の加工技術を拝見させて頂き、挑戦してみました。
まだ、技術と呼ぶにはおこがましいほど拙い加工でございますが、
これからもより努力を重ねて、良き話をお届けできればと精進してまいります。
アクアリータ殿
今回の話は、これからの話の起点になる予定でござる。
されど、このような結末を拙者は望んでござるぬ・・・。
何とか、助けて欲しいと痛切に願ってござる・・・><
makcp567殿
申し訳ござるぬっ!
K2taka殿
お願いでござるっ。お助けくだされ!!