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前回の続き【閲覧注意】…姉弟愛、その深さ故に。

【閲覧注意】
※ 本編では、一部残酷なシーンが含まれております。ご注意下さい。
  

前回の続き~

緑明村にて、巴が見たもの。
それは「鬼」となってしまった弟 朱仁 の姿でした。

その姿は禍々しく、いつもの朱仁の気配は全く感じられません。
でも、紛れも無くそこにいるのは最愛の弟の姿です。
そして、巴は気付きます。


そう、紫電がないことに。
手紙で知っていますが、紫電がかなり破損の状態になっており、また、弟子たちのことで心が弱っていたことも・・・。

そして、その背中にあるのは・・・


黒く異様な気配を持つ刀・・・。

巴は知っています。かつて、妖刀と呼ばれる物を見た事があり、そこにあるのは正に妖刀其のものの気配・・・。


「あっくん、何してるの!
 妖刀でしょ!それ・・・。
 かつてお父上様が言ってた事、忘れたわけじゃないでしょうね!!」


「・・・・・・・・」


「お姉ちゃんの言う事、聞いてるのっ!!」

「・・・・・・」

やっぱり、心を支配されちゃってるわね・・・?!

突然動き出す朱仁。
迷い無く踏み込んで来るその速さは、巴の知る朱仁の動きではなかった。

しかし、巴の回避能力はそれを上回っており、間合いを取って離れる。

「・・・問答無用というわけね!
 それにしてもこの妖刀!私の大事なあっくんに何て酷い事させるのよ!!
 許さないわよ!!!」

こうして、巴は朱仁の身体を乗っ取った妖刀と戦うことになったのでした。




物凄い速さで攻撃を繰り出す巴。

しかし、鬼はそれを簡単にかわし、または防ぐ。

更には、隙あらば攻撃を仕掛けてくるが、巴もまた身につけた無手格闘術によって攻撃を避け、または弾く。


一進一退の攻防が続く。


互いに様々な技を繰り出す中、次第に巴は鬼の動きを見切り始める。
そもそも巴は目が良く、運動神経も良い娘であった。
故に幼くして池内流無手術の免許皆伝となり、朱仁相手に遅れをとったことは一度も無かった。

それが判ったのか、鬼は次第に大きな技を仕掛けてくる。


それをもかわす巴。
しかし、その中で鬼の動きが変わっていることに気付いた。

そう、まるで朱仁の意識があるようであった。

「あっくん?」

何気なく呼びかける。すると

「・・・姉上・・・」

「気がついたのね!しっかりしなさい。鬼に打ち勝つのよ!!」

「・・・姉上、拙者を殺してくだされ・・・」

「な、何を言ってるの?そんなこと出来るわけ無いでしょ!」

互いに動きが止まる。
鬼はぶるぶると震え、何とか攻撃しようとするが、朱仁のせいで出来ないようであった。

「…拙者は力が欲しかった。あの時、弟子たちを救うことも出来ず、拙者はムイル峰での苦い思い出を思い知らされたでござる。
 故に強さを求め、壊れた紫電を納め、新たなる力を求めるたびをしてござった・・・。
 そして見つけたこの刀。
 銘は無いが、その気配に拙者は頼ったでござる。」

「なんて馬鹿な事を・・・。お父上様にあれほど言われていたでしょ!」

「覚えてござるっ!
 覚えていたでござるよ・・・。されど、拙者の力であれば、この刀を抑えられると慢心してござった。その結果がこれでござる・・・。

 …姉上、申し訳ござらぬ。
 もう、このまま拙者は消えてしまいそうなのでござる・・・。
 それほどに此の刀の主は強力なのでござる。
 然らば、どうか姉上・・・、愚かな弟の最後の頼みで、姉上の手で拙者を殺してくだされ!」

「できるわけ無いでしょ!!」

「ならぬでござる!!もう、一刻の猶予もござらぬ!!
 拙者の意識があるうちに、どうか、拙者が押さえている間に此の身体を、此の命を止めてくだされっ!」

「~~~っ!!」


巴は涙を浮かべ、項垂れてしまう・・・。
幼きより共に過ごし、共に笑い、悲しみも共に背負い、二人で懸命に過ごしてきた最愛の弟である。
何故、愛する弟の命を奪うことが出来ようか!

「お願いでござる姉上。父上や母上の教えをわかっておらなんだ拙者の過ちにござる。
 頼れるのは姉上しかおらぬでござるよ。
 拙者としては、此の身体を鬼となって好きにされとう無いでござる。
 どうか、お願いでござるよ・・・。おねいちゃん。」

『おねいちゃん』…朱仁がよく呼んでくれた愛称。
そう呼ぶ幼き朱仁との思い出が次々と溢れ出てくる。

「もう、限界でござる・・・。」

その声に鬼は一段と大きな気を纏った。

それに応じて、巴も心を決め、

「判ったわ・・・。」

右手に力を貯めていく・・・。



正に、この一撃で終わるようであった・・・。
膨れ上がる大きな力。

ゆっくりと気を練り、力を拳にためる巴。

そして、鬼が動いた。

それは、朱人の最も得意とする居合いからの突き。
最速の必殺技であった。

もちろん、巴は知っている。
朱仁の事ならば全て知っているといって過言ではない。
それほどまでに愛した、今では唯一人の肉親だ。

そして、その刀の軌道を見切り、覚悟を決めた。




技を解き、両手を広げて、愛する弟の身体を受け入れたのだった・・・。











「・・・、終わったでござるか?」


ふと顔に柔らかな感触を覚え、目を開ける。


「うおっ!!」

「…気がついた?」

声がして、視線を上げる。


「あ、姉上・・・。」

微笑む巴。その顔はいつに無く美しく見えた。

「元に戻ったのね・・・。良かった・・・。」

「あ、姉上・・・、申し訳ござらぬ・・・。
 されど、これは一体?」

聞こうとするが、巴の言葉はそれを遮った。
「あっくん、これからも大変だろうけど、絶対に負けないで。
 諦めなければ、きっとやり遂げられるから・・・、努力は・・・、必・・ぅ・・・み・の・・・・・」

「姉上?」

そして、気付いた・・・。

姉の腹に深い刺し傷があったことを。

「あ、あねうえぇー!!」

巴は最高の笑顔を見せる。

「がんばれ、あっく・・・。」

その言葉は終わりを告げず、巴の瞳が閉じた。


そして、口から滲み出る紅・・・。
そしてそのまま、崩れる様に倒れた。




・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・?!





「うわぁあああああああああああああああああ!!」



>続く
  • 紫昏00 2016.1.22. 23:51
    愛ですな( ノД`)シクシク…
  • ロンディワル 2016.1.23. 19:57
    最初から最後まで目の離せない作品ですね。すごいの一言です。

    あえて禍々しいオーラがまとうかのように手間をかけている点もすごいのですが、
    技術のための技術ではなく、物語のために技術があるというところに、
    表現をたしなむ端くれとして、敬服します。

    続きを期待申し上げます。
  • アクアリータ 2016.1.23. 21:55
    前回からシリアスな展開に⌒゚(σσ;)゚⌒
    ドーンなアップで正気に戻ってホワァって終わると思ったら(ノ◇≦。)゚⌒こ、コワイ
  • makcp567 2016.1.24. 06:43
    おねいさああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!
    ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
  • K2taka 2016.1.24. 10:07
    むむ~、助けなきゃ!!
  • ワンぱっくん 2016.1.24. 11:31
    閲覧下さり、誠に感謝でござる。
    また、いいねやこめんと、かたじけのうござる。

    紫昏00殿
     誠、姉上は優しく、愛に溢れた方でござる・・・。

    ロンディワル殿
     今回の話、拙者の未熟が引き起こした大事でござる・・・。
     
    ( わ:お褒めの言葉、心より感謝申し上げます。
        こちらの掲示板で皆様の加工技術を拝見させて頂き、挑戦してみました。
        まだ、技術と呼ぶにはおこがましいほど拙い加工でございますが、
        これからもより努力を重ねて、良き話をお届けできればと精進してまいります。

    アクアリータ殿
     今回の話は、これからの話の起点になる予定でござる。
     されど、このような結末を拙者は望んでござるぬ・・・。
     何とか、助けて欲しいと痛切に願ってござる・・・><


    makcp567殿
     申し訳ござるぬっ!

    K2taka殿
     お願いでござるっ。お助けくだされ!!