マシュターの体験談をお話します。

卯美々のマシュタ―は今ではなくなったようですが、

幼少時は霊感がとても強い子だったらしいです。

小学生の時は妖怪さんの体験をしたり、

人の死期を感じたりもしました。

もちろん、普通では見えない…いえ、

誰も見えて無い者（物）が見えたりもしました。

墓場で女性の悲鳴が聞こえたり、

手招きする人の姿を見たりもしました。

とある旅行でドライブ中、トンネルを走り終えた時、

ふと高速道路の端でたたずむ人を見た事もあります。

髪で顔を隠し、口元は笑みを浮かべて・・・。

寝つけず夜中の２時過ぎにシャワーを浴び、

サッパリした気分でふと見た大きな鏡、

誰もいないはずのそこに写った自分の後ろで、

貞子の様な女性が立っていたこともありました。

そんな私の体験の中で、特に印象深く、忘れられなかった

そんなお話をします。

成人して暫くした夏の頃です。

友人たちと夜の母校へ行ってきました。

何かと幽霊が現れると、先生方からも聞いていたので、

１つ肝試しに行こうと言う感じで５人グループで行きました。

時刻はまだ夜１０時を回ったくらいでした。

高校なのですが、建物が東西に並んでおり、

西側の正門から約１周が４００ｍほどを歩きました。

ひっそりとした夜の学校、

正門をくぐり、まずはグランドに面した表側を進みました。

所々の外灯を頼りに、暗い道を進んでいました。

そしてまず最初のスポット。

特別教室棟と言うのがあるのですが、

そこは実験室や調理室などがある４階建ての校舎です。

その中で、３階に普段は開かずの間があり、夜にその部屋を見ると

赤く染まっていると言います。

ライトは無く、外灯を頼りにその部屋を覗きました…。

が、その部屋の壁が朱色なので、そう見えたに過ぎなかったようでした。

でも、そこで友人Sが指をさします。

「屋上に人がいる！」

慌てて目を向けました。

すると確かにそこにいたのです。

真っ白な一体型のワンピース姿の女性。

でも、他にいる２人は見えないと言います。

私を含め、３人は霊感が強いタイプでした。

だから、その状況を把握できない２人は顔をしかめます。

「嘘つくなよ」

そんなことを言う友人のはるか頭上で、その女性は今にも飛び降りて来そうな程に端に立って、こちらをじっと見下ろしていました。

数秒経って、その姿はふっと消えました。

それを見て私たちは緊張を解き、後の二人も私たちを見て怖さを感じていました。

「噂は本当だったんだね。」

Ｆが言いました。彼も色々体験したことがある友人です。

取敢えず、先を進みました。

その後は特に何かが起こることなく、そして折り返し。

校舎の裏道を今度は向かいます。

こちらは外壁と建物に挟まれた狭い空間です。

外灯もまばらに点いているだけで、ほとんどが暗闇でした。

その状況が怖さを訴えてきます。

５人は出来るだけ明るく振る舞いながらその道を進みました。

「こっちは怖いけど、噂は無いよね。」

そのとおり、裏道は何故か怪談がありません。

だから、何となく安心していたのでしょう。

だからこそ、最悪の恐怖を感じました。

それは突如襲って来ました。

私たち５人は言い知れぬ寒さを感じました。

「何か寒くない？」

そう言うのがさっき全く女性を見えなかった友人。

その言葉の時点で、私は言葉が発せられなくなってました。

凍える様な状態。

寒くて口元が「がちがち」と震えるんです。

他の二人も同様でした。

でも、それだけではないのです。

いきなりなにかで頭を殴られた様な衝撃を受けました。

痛いと言うより、フッと意識がなくなりかけました。

でも、何とか堪え、友人たちと先を急ぎます。

だけど、今度は友人Ｓが動けません。

意識はあるのが分かるのですが、身動きが取れなくなってました。

俗に言う「金縛り」と言う状態でしょう。

それで他の友人が手を引こうとした時、私にも次の衝撃が来ました。

「グサッ」と言わんばかりの刺された感覚と、

激しい痛みが脊髄に起こり、

串刺しになったように私の背筋に沿って貫いた感覚を受けました。

そして、凍りつくような寒さが背中から全身を包んできます。

金縛りと言うより、氷づけられてる感じでした。

そして、何かが私の頭を掴み、無理やり口を開かせようとしてきました。

「危ない！」

そう感じた時でした。

霊感の弱い二人が私たちの手を掴んで一気に引っ張ってくれたんです。

それによって、私たちは倒れそうになりながらも、何とか足を動かし、裏の自動販売機コーナーまで移動しました。

一際明るい場所で、それまで体にあった不快感が全て無くなっていました。

ＳとＦも落ち着いた様子でしたが、私たちはその場で座り込んで、肩で息をせずにはいられませんでした。

後で聞いたら、二人も似たような状態だったらしいです。

それから少し休んでから、私たちは急ぎ足で学校を出ました。

翌朝、流石に怖くて、学校の近所にある神社でお祓いに行きました。

そこで神主さんが語してくれました。

なんでも、その外壁の裏にはお墓が一つ立っているのです。

そのお墓の更に向こうには古い平屋があり、

ある台風で家が倒壊してしまったらしいんです。

それでそこの人は引っ越したんですが、不運にもその人達は事故に遭ってしまったらしいのです。

以来、お墓は荒れる一方。

そのせいとは言えないが、近所の人がたまに怖くなってお祓いを受けにくる事が増えているとのことでした。

よっぽど私たちの話に衝撃を受けたらしく、神主さんと一緒にそこへ向かいました。

ちょうど怖い思いをした場所の裏に、一つだけぽつんとお墓がありました。

草は生え、お供えも無くたたずむお墓。

そこで神主さんが気付いたのが、

お墓の遺灰を入れる所がずれていたらしいのです。

それで、折角なので、簡単ながら草を抜き、近くの野花を供え、

お墓を綺麗にしました。

そこで神主さんもお祓いをして、このお話は終わりとします。

その後は行ってないので分かりませんが、

以来、私は霊体験をすることが無くなりました。

もしかしたら、私の霊感を盗まれたのかもしれませんね。

嘘のような、本当にあったマシュターの体験話でした。

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