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百物語参加作品 『笑顔の約束』

わんばんこ^x^ノ 卯美々だよ~w

今日は、先日行われた「真紅・百物語」にて、お話しさせて貰った作品を掲載させて頂きます。
と言うのも、何人かの方から掲載してほしいというありがたいお言葉をいただきまして、調子に乗って掲載したまでなのです!
というのは半分で、もう一つは「怖かった」という感想を頂いた方々に、実際は短縮してますと申し上げたところ、「完全な形で読みたい。」と強い要望を頂いたので、それにお答えさせて頂きます。
正直、超過してしまって申し訳なかったし、急ぎ足だったので、十分読んで頂けてないかも?という気持ちも若干あります。

そんなわけで、興味ある方はこのままお読みください。
怖いの苦手!って方は構わず戻って頂いて構いません。

それでは、改めてお送りします。

創作作品 『笑顔の約束』
ジャンル サスペンスホラー…ぽい?


これは愚かなる僕のお話です。


僕には「ちひろ」という、一つ下の幼馴染の女の子がいました。


いつもニコニコと笑うとても愛らしい小柄な少女です。


そんなちひろとは、幼い時からずっと一緒に育ってきたため、僕にとっては可愛い妹のような存在でした。


時は過ぎ、僕は高校2年となり、ちひろは僕の後輩となって、入学して来ました。


「にぃ~ちゃん、一緒にかえろぉ~。」


入り口を出た辺りで僕を見つけたちひろが、いつものように笑みを浮かべて駆けてきます。


「ああ。それじゃ正門でたら後ろに乗れ。」


そう言って正門まで一緒に歩いた後、先生に見つからない様に、こそこそ隠れながら自転車の二人乗りで帰る僕たち。


そんな僕たちをほのぼのと見守る友人たち。


僕とちひろの仲を友人たちは兄妹のように見てくれます。


でも、そんな中で一人不愉快な表情をする女性がいます。


そう、1年生終わりから付き合い始めた僕の恋人。


彼女にはちひろとの事は説明しています。


でも、それまで一緒にいた時間が、ちひろによって少なくなっていた事に僕は無頓着でした。


そんなちひろとの帰り道でふと、僕は尋ねました。


「ちひろはいつもにこにこ笑ってるな。嫌な事なんてないのか?」


自転車を漕ぐ僕の問いかけ。それに対してちひろは


「うん。にぃ~ちゃんと一緒は楽しいよ~。」


「…そっか。」


一生懸命に僕の腰に手を回すちひろ。そんなちひろは、僕らがまだ小さい頃に両親を亡くしました。車の事故でした。


あの頃、ちひろはずっと泣いていました。


そんなちひろが、今ではにこにこと笑っている。


これはとてもすごい事だと思う。


ちひろは、きちんと両親の事にけじめをつけたのだと、ある意味尊敬もしている。


考えてみれば、あれからちひろが笑う以外の顔をしたのを見た覚えがない。


本当に強いなと、僕は背中にいる小さな少女に感心していた。


~~~~~~~~~~~~~ 

「ねぇ、私とあの子、どっちが大切なの」


恋人が唐突に尋ねて来た。時間は1時間目の後の休み時間。


「何言ってるんだよ。」


僕は意味が分からないままに聞き返した。


「私たち、付き合ってるんだよね?でも、あの子が入学してから、一緒にいる時間が少なくなってるじゃない?」


やや怒りを含めた恋人の言葉。確かに言われれば分からない事は無い。でも、


「確かにそうだが、言っただろ?ちひろは僕にとって妹のような存在で、今ではお婆ちゃんと僕しかいないんだ。そんな妹を大事にしない訳にいかないだろ?」


そう言うと恋人は歯噛みし、怒りを一瞬見せた後で大きく息を吐いた。


「そう。まぁ、それならわたしもちひろちゃんを手助けしてあげなきゃね。」


「ああ、ありがとう。頼むよ。」


そんな会話の後、短い休み時間は終わっていた。


~~~~~~~~~~~~~

 

そして昼休み、いつもなら一緒にお昼を食べようと来るはずのちひろが僕のとこに来ない。


あれ?と不思議に思っていると恋人が


「さっきちひろちゃんに友達を紹介してあげたの。気が合うみたいで、今日は友達とお昼食べるみたいよ。」


「あ、そうなのか。ありがとな。」


そう言って、恋人と二人で昼食をとった。


~~~~~~~~~~~~~

 

そして放課後。帰りに玄関に行ってもちひろがやってこない。


おかしいなと思っていたら、再び恋人が、


「ちひろちゃん、お友達と一緒に先に帰ったみたいよ。」


そんな言葉に違和感を感じながらも、僕はそんな事もあるなと思って、そのまま恋人と帰路についたのだった。


~~~~~~~~~~~~~

 

その夜。ちひろのお婆ちゃんが僕に帰ってこないと言ってきた。


僕は慌てて恋人に連絡を取るが、恋人は電話に出ない。


もしかしたらとの思いで僕は学校へと自転車を走らせた。


静まり返った学校。まだ、正門は閉まっていなかったため、僕は急いで校舎に入ると、下駄箱を確認。下足があることから、まだ校舎でいることを知って、ちひろの教室へと向かった。


そこで初めて僕は知った。


ちひろの机。


それに刻まれた落書きの数々。


大人しいちひろだけに、年上の僕と仲良くしてるのを冷やかす内容から、更にはちひろの人格を侮辱するような内容でいっぱいだ。


見てるだけではらわたが煮える思いがした。


そう、ちひろはいじめに遭っていたんだった。


こんな酷い仕打ちをされて、それでも僕に心配を掛けまいと、笑顔で接していたちひろ…。


しかし、肝心のちひろが見当たらない。


僕は廊下を走った。途中、見回りをしていた用務員さんに会い、事情を説明して一緒に探してもらう。

 

そして僕は体育倉庫ですすり泣く声を聞いた。


「ちひろぉーっ!」


僕は倉庫の扉を叩いた。すると泣き声は止み、中から声がした。


「にぃ~ちゃん?」


ちひろの声だった。僕は用務員さんを呼び、鍵を開けて貰うと、手荒く扉を開けた。


用務員さんが照らす懐中電灯の先。


そこにはニコニコ笑顔のちひろがいた。


「ちひろ、大丈夫か?」


ちひろは笑顔のまま「うん。」と答えた。


どうやら4時間目の体育の後、片付けに来たらそのまま閉じ込められていたらしい。そしてそのままこの時間まで、暗い中を一人で過ごしていたんだ。


すっかり冷えた体。泣いていたであろう頬の涙後。


でも、今はもう笑顔のちひろである。


その笑顔に少し違和感を感じながらも、僕はちひろを連れて帰った。


~~~~~~~~~~~~~

 

翌朝。僕はちひろを連れて恋人を呼び出し、事の真相を問いただす事にした。


怒り露わに話す僕。それに対する恋人もまた怒りを見せている。


そんな中でちひろだけが笑顔を絶やさない。


恋人の言い分は、僕が構わないためにちひろに意地悪したらしく、ちひろのクラスの子たちに指示してそうさせたとのことだった。


最早、僕は別れるつもりだった。


「何にせよ、こんな事をする人を僕は許せないし、信じられない。」


「何よっ!どうして私がこんなことしたかまだ分からないの?私は貴方が大事なのよ!なのに、あなたはその子の事ばかり…。」


言い合う中で、彼女の本音が暴露した。


「私は、貴方が好きで仕方ないのよ。どうしてそれが分かってくれないの?どうして私を大事にしてくれないの?私たち、付き合ってるんでしょ?」


その言葉には流石に何も言えなかった。ちひろを大事にするがために付き合おうと話した恋人を大事にしなかったのは事実だ。


「ごめん。」


僕はそれまでの態度に詫びた。その時だった。


「にぃ~ちゃん、この人は、にぃ~ちゃんの恋人?」


それまで何も言わなかったちひろが問いかけて来た。


僕ははっとしてちひろを見る。そんなちひろの顔は笑顔だが、いつもの感じが無い。強張った感じの笑顔だ。


「・・・ああ、彼女とは恋人だったよ。」


その瞬間、ちひろの顔が一瞬おびえた表情になった。が、まさに一瞬のことで、再び強張った笑顔になる。


「恋人って、にぃ~ちゃんはこの人が好きなの?」


「・・・あぁ。でもな・・・」


曖昧ながら、そう答える僕。それを聞いた途端、ちひろが豹変した。


「じゃあ、じゃあ、ちぃはにぃ~ちゃんのお嫁さんになれないの?」


もう、笑顔は無かった。始めて見る悲壮感に染まる切羽詰ったちひろの顔は、ある意味恐怖だった。


「お嫁さんて、ちひろ、お前…」


「ちぃは!ちぃは、ずっとにぃ~ちゃんのお嫁さんになれると思って頑張ってきたんだよ!にぃ~ちゃんがずっと笑顔でいたらお嫁さんにしてくれるって言ったから!」


いつになく声を荒立てて叫ぶちひろ。その言葉に、僕はようやく生まれて初めての約束を思い出した。


~~~~~~~~~~~~~

 

それは両親を失ったちひろが、公園のブランコで一人泣いていたのを見つけた時のこと。


両親を亡くして涙するちひろの前に、僕はちひろの両肩を掴んで言い聞かせるように言った。


「ちぃちゃん、もう泣いちゃダメ。ちぃちゃんが笑ってないと、おじさんもおばさんも悲しくて天国いけないよ!」


「パパもママも天国行かないで、ちぃのとこに戻ってほしい。」


「それは出来ないってお父さんたちが言ってた。」


ちひろが更に泣こうとする。そこで僕が言った言葉。


「ずっと笑顔でいてちぃちゃん。そしたら、僕がずっと傍でいて、ちぃちゃんをお嫁さんにして守るから。約束するから。」


「ほんと~?」


「うん。約束する!だからもう泣いたりしないで笑ってて!」


「うん。」


~~~~~~~~~~~~~

 

思い出して、僕はちひろの顔をじっと見つめる。そうか、この子はずっと僕との約束を守って、ずっと笑顔でいたんだ。


でも、今はまた哀しみにくれている。僕は今更気づいた自分に怒りを覚え、逆にちひろを愛おしく感じた。でも、


「ぅあ、あぁ、ぁぁあ、ああぁーーー!!」


慌て始めたちひろ。自分の顔を両手で抑え、身体を小刻みに震わせる。そして次の瞬間、逃げるようにその場を走り去る。


「待てちひろっ!」


僕は追う。ちひろは凄い速さで階段を駆け上り、屋上へと走って行った。息を切らせ、僕も僅かに遅れて屋上に出る。


「ちひろっ!」


呼びかけに対し、背を向けていたちひろが大きく深呼吸を繰り返す。そして、ようやく落ち着いた様子を見せると、再びいつもの笑顔をこちらに向けた。


「にぃ~ちゃん。」


いつもと変わらない笑顔。気持ちを切り替えたんだと僕は微笑を返した。


でも、次の瞬間、ちひろの笑みは消え、ぎょっとした様子で僕の背後を見つめた。


そう、僕らの後を追ってきた恋人が僕の背後に現れ、次には僕の片腕を抱き込んだのだ。


「わたしのにぃーちゃんにさわるなぁー!」


怒り露わに叫ぶちひろ。その姿は何とも悍ましく、今までの溜め込んだ怒りを吐き出したかのようであった。


その姿に、僕でさえも怯んでしまう。


それを目にしたちひろはハッとなり、再び顔を両手で抑え込んだ。


「ちひろ?」


様子を伺おうと名を呼ぶ。


するとちひろはすぅ~っと息をのみ、僕を真正面に見た。


そして笑顔を見せる。


その笑顔は、今まで見てきた笑顔とは段違いの、心の底から笑っているような素敵な笑顔だった。そして、言葉が語られた。


「ごめんね、にぃ~ちゃん。笑顔でいる約束、守れなかったよ。これじゃ、ちぃはお嫁さんになれないね。でも、ずっと今までちぃと一緒にいてくれて、ちぃは嬉しかったし、楽しかったよ。」


そう言ったちひろは踵を返すと、迷いも無く屋上の手すりを飛び越え、そのまま宙へと舞ったのだった。


「ちひろぉ――――!!」


僕は慌ててその手を掴もうと駆ける。両手を千切れんばかりに差し出す。


落ちて行くちひろがスローモーションの様であった。


あと少しで間に合う!そう思って更に右手を突きだした。


だが、そんな僕の腰に恋人が抱き付き、右手は虚空を・・・。


僕の目の前にじっと見つめてくるちひろの優しげな微笑み。


その笑顔が視界から消えた時、僕は絶叫し心は崩壊した。


~~~~~~~~~~~~~

 

あれから何年経っただろうか。


ちひろは屋上から飛び降り、即死の状態だった。


この一件は学校全体を巻き込んだ大事件となり、あらゆる事が明るみとなった。


それによってちひろへの仕打ちを世間に知られた恋人は、周囲から非難を浴びて数日後に飛び降りて死んだ。


また、学校にてちひろをいじめていた生徒たちも、飛び降りて自殺した。


また、ちひろの担任も・・・。


それら皆、ちひろの落ちた場所と寸分変わらぬ場所であったことから、ちひろの落ちた跡には今も尚、黒く変色した部分がある。


そのような場所を人が畏れぬわけがなく、度重なる自殺で呪われた学校と噂が立ち、次第に気味悪がられたことから入学者が途絶え、今や廃校となっている。


~~~~~~~~~~~~~

 

僕はと言うと暫く精神病院に入院し、何とか社会復帰は果たすが続けていけずに、今は木を彫り続けている。


木工で生活を営み、空いた時間は亡くなった者の供養の人形を彫り続けている。


彼女、女生徒、先生・・・、そして今はそうした人形を彫ってほしいと言う依頼を熟したりもしている。


でも、そうした人形の中にちひろの人形は無い。


作ろうかと思いもしたが、そんな必要などないからだ。


僕は彫り続けた疲れから、道具を机の上に置き、首を回すと、その流れのまま、左後ろに顔を傾けた。


「そうだよな、ちひろ。」


そこに存在するのは、あの時のままの姿の僕の愛しい妹のような幼馴染。


最早片時も離れなくなった僕の背後で、少女は笑顔を見せたのだった。



この笑顔を僕はずっと見続けるだろう。


たとえこの身が朽ち果てようとも、それは変わらぬ誓い。


そう、これから未来永劫、僕とちひろは決して離れることなど無いのだから…。




終わり






以上が、完全な形で用意していたお話です。


私自身、哀しいお話にしてしまったなと思ったのですが、意外と怖いお話と評価頂いたのにはびっくりでした。


ただ、最後は何とか「ちひろ」に幸せを与えたいと思い、このようなラストにしています。


さて、呼んで下さったあなたの感想はいかがでしょうか?



補足ですが、更に卯美々は毎回のように休憩時間前のお話もさせて頂きました!

今回は小話風にしてみましたが、実はあれ…、


↑この人の幼少時代の実話だというのは内緒(*´ω`*)



それではまた、今度は楽しいお話でお会いしましょう。

それじゃ、まったね~^x^ノシ

  • Rendounagi 2016.8.18. 20:49
    卯美々さん、百物語語り部お疲れ様でした。
    完全版はかなりボリュームがありますね。ついのめり込んでしまいましたww
    全体的には悲しい話ですけど、自殺のくだりで結構鳥肌が立ちました((´д`;))
  • veldandy 2016.8.18. 23:00
    卯美々さん、百物語拝聴させていただきました^^
    初めての参加だったので、どんなイベントなんだろうと思ってましたが
    意外と真面目に怪談を語ってくれるので楽しかったです♪
    司会のアズラさん?(間違ってたらごめんなさい)に自分も語りたいって言ったら
    二次会か来年によろしくといわれましたw
    次もぜひ参加させていただきますね^^語り部として志願したいと思います♪
  • べに天使 2016.8.19. 07:44
    百物語 おつかれさまでした~!!!

    せっかくの記事本文ではありますが・・・
    高速スクロールで見ないことにしちゃいました^^;
  • アクアリータ 2016.8.20. 06:17
    百物語おつかれさまでした⌒゚(_ _)ペコリッ
    わーい♪完全版掲載感謝です❤(≧∇≦)゚⌒←希望者の一人w
    感想は…本誌の方にシッカリ掲載させて頂きます⌒゚(*_ _)人
    また、ちひろちゃんのSSを先行手配して頂きありがとうございました❤
    百物語特集は増刊になるので加工幅は大きくありませんケド
    精一杯イイカンジの作らせて頂きますので
    宜しくお願い致します(^-^)゚⌒
  • 小早川凛子 2016.8.21. 00:55
    いつも百物語参加ありがとう(`・ω・´)
    もううみみんのトップバッターは固定ね!
  • K2taka 2016.8.28. 23:27
    ※ずいぶん遅くなり申し訳ありません>x<
     たくさんの閲覧、「いいね!」&コメント、ありがとうございました。
     お盆以降、休みもなくひたすらお仕事に負われておりましたw
     
    >Rendounagiさん
     お疲れ様でした。確か海外から帰られてすぐだったんですよね?
     怖いお話が好きな卯美々として、楽しませて(?)頂きました^x^
     
     このお話は卯美々の創作で、この長さを何とかまとめようとしましたが、結局時間超過でして、
     申し訳ありませんでした。
     哀しいお話で、何とか最後はちひろちゃんに幸せをあげたいと思い、あのように締めくくりました。

    >veldandyさん
     ありがとうございました^x^
     毎年参加しておりまして、昨年までは実体験談をお話しておりました。
     あと、漫才もしてましたが、今年は相方がおらずに小話にしました。
     来年は是非、お聞かせくださいませ(*´ω`*)

    >べに天使さん
     ありがとうございます。
     怖いのが苦手でしたら、それもアリですね^x^
     サスペンス風なので、気が向いたらお願いしますw

    >アクアリータさん
     お疲れ様でした。
     先ほど、増刊を拝見しました^x^
     すごく素敵な内容でとっても感謝です(*´ω`*)
     また、次回からもよろしくお願いします。

    >お姉ちゃん
     ありがとでした^x^
     トップは譲りません!(笑)